産みの母との面会 3

8月23日に、仕事を見つけたために面会をキャンセルした産みの母だが、予定していた9月最初の日曜日である8日の面会は、再びキャンセルとなった。

面会の日の前日の土曜日、産みの母が車に撥ねられた。
連絡は面会の当日に養子縁組エイジェンシーの担当ソーシャル・ワーカーから入った。幸い大事に至らず軽症で済んだが、ひき逃げだったらしい。目撃者もなく、産みの母も意識を失っていたため、結局犯人は分からず仕舞。
軽症とはいえ、娘がまだお腹の中にいる時だったら..と思うとゾッとした。

打ち身とねん挫以外、本人は元気であるということで、9月12日に久しぶりに会うことにした。


12日、娘の初めての予防接種の後、産みの母に再会した。
ひと月以上ぶりに会う娘に、とても驚いた様子を見せる産みの母。松葉杖は取れたけれど、片足に大きなギブスをはめ、体のあちこちに痣や擦り傷が痛々しい。この娘には、本当に次々と災難が降り掛かかる。それでも、精神状態がとても良い産みの母は、過去の面会とは全く異なった様子で、元気一杯に娘との再会を喜んでくれた。
これまでの面会で、娘はいつも産みの母の胸の上で眠り続けていた。このひと月で娘が起きている時間が大分多くなり、産みの母はより嬉しそうだったが、いつもの様に愛おしげに抱き続けても、ぐずり始めるとどうして良いか分からなくなった様子で、すぐに私たちに助けを求める。彼女が産んだ子ではあるけれど、今は私たちの子なのだ、と彼女の前で初めて強く思った一瞬だった。
前回までの面会時間はおよそ2時間、最期まで名残惜しそうにしていた産みの母が、この日は自ら1時間半で切り上げ、とてもさっぱりとした様子だった。
会わないひと月の間に、大分気持ちに変化があったのかもしれない。


面会は、産みの母が通っているユースの施設で行われた。
施設には、とても雑破で簡素な託児室がある。家族のサポートのないストリート・キッズたちが産んだ子達を預けることが出来るようになっている。政府のユースへのサポートもあるが、21歳で打ち切られる。施設の職員の話では、親が10代または20そこそこのシングルのまま産み、ここで育った子供達の80%以上が親と同じ道を繰り返すのだそうだ。それを分かっていても、子供を手放す事が出来ない親が殆ど。政府のサポートが切れ、結局育て上げる事が出来ずに子供達はフォスター・ファミリーの元を転々と回される。

自分とは同じ経験をさせたくない、自分が得る事が出来なかった安定した暮らしを与えたいと強く願った産みの母が、周りの若い母親とは異なる決意をし我が子を養子に出した事を、『あの時は本当に苦しかったけれど、自分の決断は正しかった』と、心から思ってくれる日が来ると良いなと思う。


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