双子の妊婦

夫を通じて知り合った夫婦の奥さんが双子を妊娠した。そのニュースを聞いたのは夏の初めだった。それから間もなく、赤ちゃんが双子と分かり夫婦はとても喜んでいた。

他人の妊娠のニュースを聞くにつれ、口でおめでとうと言いながら、また置き去りにされたなと内心がっかりする。自分の子供は諦め養子縁組に希望を抱いている現在でも、どうしてもそう思ってしまう。ああ、この人もやっぱり普通に妊娠出来る人だったのだ、と。
だから、妊娠したと聞いたときも羨ましいと思ったけれど、赤ちゃんが双子と聞いてなお羨ましいと思った。


先月大きくなったお腹の彼女に会った。
12月末から1月に出産予定だという彼女のお腹は、今すぐにでも赤ちゃんが出てきそうなくらい大きくなっていた。その時、出産まであと4ヶ月弱、私が、「赤ちゃん動いてる?」と訊くと、彼女は「時々動くよ」と嬉しそうに答えた。そして、私がお腹を触ってもいいかと尋ねると、「どうぞ」と言って触らせてくれた。そっと手を添えると、なんだか水のたっぷり入ってパンパンになった風船みたいだった。



数日前。
夫婦の双子が亡くなったと知らされた。出産まであと3ヶ月だった。
最近奥さんは随分長く入院していたらしい。まだ人とちゃんと話す事が出来ないほど夫婦は悲しみに打ちのめされているから、流産だったのかお腹の中で亡くなってしまったのか、いったいどうしてこんな事になってしまったのか、詳しい事は分からない。
妊娠後期に差しかかっていたし、このようなことが起こる事、そして双子の二人ともが助からなかったこともショックだった。自然に妊娠し順調だったのに、こんな不幸が起こってしまうことがあるのだ、と。


私は妊娠した事が無いので、我が子を失う悲しみを100%理解する事は出来ない。
しかし、3月の養子縁組のワークショップで教えられたように、妊娠出来ない悲しみと我が子を失う悲しみが本当に同様であるのなら、私は多分どちらも経験した事が無い人よりも、彼女の悲しみを理解出来ているのかもしれない。
そして妊娠の報告にがっかりし、羨ましいと思ってしまった事を内心恥じた。
更に、そう思いつつもおめでとうと言い妊婦のお腹に触れてしまったことで、悪い気を送ってしまったのでは...と、怖くなった。私はそんなに迷信深くもないけれど、まさか私が触れたせいでは?などと一瞬本当に思ってしまった。


次に彼女に会った時なんと言えば良いのか分からない。ただ抱きしめてあげるだけしか、出来ない気がする。


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