体験談 その3

時間が過ぎるのは本当にあっという間。

バケーションに出かけた日から、もうひと月経ってしまった。
旅行先で会った義理兄の友人夫婦に、滞在中一度夕食に招かれた。

夫婦は2年程前に、エチオピアから女の子を養子に迎えた。しかし彼らは始めから国際養子縁組を望んでいたのではなく、始めは国内養子縁組を申し込んでいたらしい。
国内養子縁組は、3年待ったけれど何の話も来なかったそうだ。奥さんの話では、彼らの間に既に実子が居るため、敬遠されたのだという。
結局、国際養子縁組へ切り替えて1年で、エチオピアから1歳の女の子を迎える事になった。


子供を迎えにエチオピアに飛び2ヶ月程滞在、娘となる子を滞在先のホテルに迎えて共に暮らし、ある程度信頼関係を結んでからカナダに帰国した。
この時の養子縁組のプロセスで最も辛かったのが、産みの母に会った時だったそうだ。

3歳になるその子は、今は本当に延び延びと明るく、どこにも問題はないように見えるが、カナダに帰国した当時は、ミルクを飲み終わっても哺乳瓶を絶対に離そうとしないなど、食に対する執着が最近までとても強かったという。それは、エチオピアの施設に居た時に、ミルクを飲んでいると別の子供が奪い取ってしまうということが頻繁にあったためで、誰も守ってくれない中、1歳の赤ちゃんに出来る最低限の自己防衛だった。その習慣が、カナダに来てからもなかなか抜けなかったそうだ。
それに、今でも『汚れたおむつを誰も取り替えてくれなかったから、エチオピアは嫌い』などと言うのだそう。
帰国後、ずっとカウンセリングに通っていたというが、施設でのトラウマは今でも心に深く傷となっているらしい。
人は、3歳くらいまでは生まれた時からの記憶を持っていると聞いた事があるが、この女の子も、言葉が話せない1歳までのエチオピアでの辛い体験を今も覚えているようだ。


私たちが知らなかったこと、迎えた後が想像以上に大変そうな国際養子縁組の体験の一部を聞く事が出来て良かった。
記憶はいつか埋もれて思い出す事はなくなるだろう。辛い体験を乗り越え幸せをつかんだ彼女には、愛する家族の中で本当に良い人生を歩んで欲しいと思う。


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