友人の体験談 その2

先日初めて、国内養子縁組を『失敗した』と思っていそうな人の話を聞いた。
彼は多分60近くになり、縁組した娘は30を過ぎている。
30年前は、現在のようなオープンな形をとっておらず、彼が養子縁組した子の産みの親の情報は隠されていたという。

私たちがカナダ国内で養子縁組をするつもりだ、と言うと、開口一番『産みの親のバックグラウンドは、しっかりと調べるべきだ』と言われた。
縁組をした時には、全く問題があるようには見えなかった彼の娘。しかし彼女は重度の胎児性アルコール症候群にかかっていた。
気がついたのは、彼女が10歳くらいに成長してかららしいが、現在では自分の力で生活をしていくことも難しい状態だという。


妊娠中の過度なアルコール摂取によって起こる胎児性アルコール症候群は、私たち夫婦も一番気にしている問題である。
ただ、昔と違って現在ではオープンという形をとっているため、知らなかった、ということにはならないとは思っている。
胎児性アルコール症候群の子は、度重なるアルコールの影響で脳細胞がきちんと発育していない、または一部全く無い状態で産まれてくるため、日常生活、社会生活がきわめて困難な場合が多い。
彼の娘は物の価値判断や、相手の気持ちや状態を考えて行動することが出来ない。簡単に言うと、自分の気持ちのみに従って行動、相手に対する感情移入は全く無い。いくら世話をやいても、ありがたいとか感謝の気持ちも無い。そしてお金でも貴金属でも、自分にとって大切でないものは全て捨ててしまうそうだ。その他にも、食事や生活のコントロールが出来ない、肉体的にもあまり健康ではなく、病院に通う事が多いという問題を抱えている。
彼は、彼女のためにカウンセリングや治療で相当なお金を費やして来たが、全く変化がないそうだ。
当時の奥さんと死別して以来、1人で娘の世話をしているが、娘は彼とは暮らしておらず、政府の援助で一人暮らしをしている。しかしほったらかしておく事も出来きないし、娘に時間を問わず呼び出されることも多く、色々と大変だと言っていた。


これまで多くのポジティブな話を聞いて来たけれど、これは初めてのネガティブな体験談だった。
当時の奥さんが亡くなり、別の女性と結婚した現在、彼が養子縁組した娘のことをどう思っているのか、私には最後まではっきりとは分からなかった。


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