子供を返却?

日曜日の夕方、インターベンション・チェック・リクエスト用紙をポストに投函した。月曜日朝一の集配で、順調に行けば今日にはチルドレン・サービスのオフィスに配達されるだろう。


前回の記事で、産みの親は10日間の心変わり猶予期間を与えられている、と書いたが、実は養父母の方にもこの10日間の猶予は与えられている。
自宅に連れて帰って、10日間の間に予期しない事が起き、何らかの事情で育てられない場合、10日以内であれば、おかしな言い方だが子供を返す事が出来るらしい。
これは、カナダ国内養子縁組のみに与えられている猶予期間で、国際養子縁組では適用されない。
これまでに、一度連れて帰った子供を10日以内に返した養父母が実際にいるのかどうか、エイジェンシーでは聞かなかったが、希望していない健康状態の子供を縁組されてしまった場合などで、まったく無いというわけではないようだ。


一度受け入れた子を返す。
この間アメリカで起きた事件を思い出す。
ロシアから養子に迎えた7歳の男の子を、『この子をもう育てられないから、返す』という内容のメモと一緒に1人でロシアに送り返したという事件。
多くの人が、この女性の行為に反感を持ったはず。私も、ニュースをちらっと聞いた時に彼女に対して同様にネガティブな印象を持った。
しかしその後、この女性のメモを読み、彼女側の言い分も良くわかる気がした。
ロシアの施設ワーカーが、この子供のメンタルな部分に問題があることを知っていたにも関わらず、施設からこの子を早く追い出す為にその問題を隠したまま養子縁組をした。この部分はこの女性の推測であると思うが、子供は暴力的でサイコパス、出来ること全てやりつくしたが、家族、友達と自分自身の身の安全の為に、もうこの子の親ではいられない、とまで言っているからには、実際にこの子は手に負えないサイコパスだったのかもしれない。


自分で生んだ子だったら選べないわけだし、一度親となったからには責任持って育てるべきという意見がほとんどかもしれないが、養子は自分の生んだ子ではないからこそ、身に危険が及ぶほど暴力的な子供は愛情もって育てられないと、思うのは自然のことではないだろうか。そして愛情無く、恐れ憎しみながら育てるよりも、早いうちに送り返して専門家の治療なりを受けさせるべきではないのか。
この養母をひどい人と一言で言ってしまえるほど、単純な問題ではないような気がした。
サイコパスと分かっていながら、それと伝えられずに縁組みされた子供を育てることは出来ない、とそう思う私と夫は養父母として失格なのか?


それからもう一つ、カナダで起こった似た話で、でも結末が全然違うトラブルを随分前に聞いた。
中国から赤ちゃんを養子縁組したカナダの夫婦。
普通に健康な赤ちゃんを希望し、中国側からも健康に問題無しと言われて養子縁組。しかし、赤ちゃんには隠されていた遺伝的な重病があった。この夫婦はもちろん騙された、として最初は怒っていたけれど、子供は愛しく罪はないためこのまま生涯に渡ってこの子の面倒を見ていく、と語っていた。


肉体的な遺伝病と脳の病気であるサイコパス。
どちらも本人が望んでそうなったわけでは無く、子供には罪は無い。
しかし暴力的で他人に対する同情心は無く、将来犯罪を犯す確率も高いサイコパスの子であったら、私もアメリカ人の養母と同様に育てられないと思うだろう。
自分で生んだのではないからこそ、そう思うのは自然なことで、誰も彼女を責めることは出来ないと思う。
責めるとしたら、少年に付き添ってロシアに行かずに彼をたった一人で送り返した、その行為だ。



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